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福祉の情報分析Vol.2「「親亡き後」の課題について」

 日本の社会保障の水準(政府が国民の生活を保障する水準)は意外に思われるかもしれないが、先進国のなかでも最も低い水準にある。したがって、北欧などの福祉国家が「大きな政府」とされるのに対して、日本やアメリカは「小さな政府」に分類される。

 では、なぜそのことがさほど問題にされなかったのか。それは終身雇用・年功序列にもとづく日本的な雇用の仕組みのもとで、福利厚生面も含めて、企業が従業員とその家族の生活を支えてきたためである。また、夫が働き妻が家庭を守るという「男性働き手モデル」のもとでは、保育や老親の介護、障害のある子ども(成人になっていても)を専業主婦である妻(母)が支えてきた。そして、そうした家族による扶養ができない場合に、家族の機能を代替する入所施設が対応してきた。とくに障害のある人の場合には「いま」は親が元気でも、いつまでも親が障害のある子どもを扶養し続けることはできないので、「親亡き後」の課題に応えるという観点からも入所施設が求められてきた。

日本の社会保障の水準(政府が国民の生活を保障する水準)は意外に思われるかもしれないが、先進国のなかでも最も低い水準にある。したがって、北欧などの福祉国家が「大きな政府」とされるのに対して、日本やアメリカは「小さな政府」に分類される。

 では、なぜそのことがさほど問題にされなかったのか。それは終身雇用・年功序列にもとづく日本的な雇用の仕組みのもとで、福利厚生面も含めて、企業が従業員とその家族の生活を支えてきたためである。また、夫が働き妻が家庭を守るという「男性働き手モデル」のもとでは、保育や老親の介護、障害のある子ども(成人になっていても)を専業主婦である妻(母)が支えてきた。そして、そうした家族による扶養ができない場合に、家族の機能を代替する入所施設が対応してきた。とくに障害のある人の場合には「いま」は親が元気でも、いつまでも親が障害のある子どもを扶養し続けることはできないので、「親亡き後」の課題に応えるという観点からも入所施設が求められてきた。

このように実は「親亡き後の保障」の問題は、解決されないまま今日まで引き継がれているのである。では、どうすればいいのか。もし日本が北欧のような福祉国家を目指せるのであれば、税制も含めた社会保障制度の抜本的改革による対応もあり得るが、いま直ちにそうした国民的合意が形成できるとは思えない。だとすれば、こうした課題に気づいた人たちや組織が、力を合わせて取り組んでいくしかない。その際のキーワードは「生活保障」である。当法人の「ひだまり園」のように介護が必要となった高齢の知的障害者用の居住の場の整備や、いったん入所施設から退所した元入居者の生活を、再び支える機能を充実させるなど、入所・通所を問わず相談に訪れる人も含めて、法人に関わる人たちの生活を保障するという観点が重要となる。それぞれの法人が責任をもって実践し、相互に連携をしていくことで、補い合い、お互いに高め合う関係を構築していくこと、そして固定観念に縛られずに新たな戦略を構想し、コミュニティにおいて具体的なアクションを起こしていくことが求められている。  

KCDラボ代表 松端克文